Dify(ディファイ)は、LangGeniusが提供するオープンソースのLLMアプリ開発基盤です。チャットボット・RAG・Agent・WorkflowをGUIで設計し、WebアプリやAPIとして公開、Langfuse等でObservabilityまで一気通貫できます。GitHubで14万+スター(2026年6月時点)を超え、国内でも「LLMアプリを素早く作る基盤」として認知が広がっています。本記事は機能網羅ではなく、n8n(iPaaS)やOllama(ランタイム)との層の違い、4種のアプリタイプ、改変Apacheライセンスに絞って整理します。料金・上限は2026年6月時点です。
試験で問われる見方
生成AIパスポートでは、RAG、AIエージェント、業務データの取り扱いがセットで問われます。Difyは「RAGパイプライン+公開UI+ログ」をまとめて提供する具体例として押さえると、抽象概念が実務に結びつきやすくなります。
試験で混同しやすいのは次の2点です。①Dify=LLMそのもの、ではない——OpenAI・Ollama等を接続する側です。②Dify=Zapier/n8nの別名、でもない——SaaS連携自動化(iPaaS)ではなく、生成AIアプリの設計・運用基盤(LLMOps)です。
このサイトの演習で確認する
生成AIパスポート:一問一答 TF-0321(許可されていないサービスへの入力)、TF-0409(社外資料の公開前確認)、TF-0240(外部ツールと権限)
G検定:一問一答 TF-170(生成AI) · 用語:RAG、AIエージェント
Difyとは
Dify(dify.ai)は、2023年にLangGeniusが公開したProduction-Ready Agentic Workflowプラットフォームです。公式スローガンは「Build Production-Ready AI Agent」——プロトタイプで終わらず、スケール・安定性・セキュリティを前提にした本番運用を想定しています。
技術スタックはGitHub上でTypeScript + Pythonが中心。Docker ComposeでPostgreSQL・Redis・ベクトルDB等を含む一式を起動し、ブラウザのWorkspaceからアプリを管理します。Cloud版(Sandbox / Professional / Team)とセルフホスト版(Community / Premium / Enterprise)の二系統があり、同一Dockerイメージ+ライセンスで機能差を付ける公式説明もあります(GitHub Discussions)。
公式は100万+アプリが稼働、50,000+チーム、130+国で利用と統計を掲げ、Volvo Cars・リコー等の導入事例を公開しています。国内でもエンタープライズQA Bot(19,000+従業員向け)のような大規模事例が公式サイトに紹介されています。
4種のアプリタイプ
Difyの独自性の一つは、用途に応じて4種のビルダーを使い分けられる点です。試験では「AIアプリ=チャットだけ」と決めつけず、Workflow型とAgent型の違いを押さえると得点しやすくなります。
| タイプ | 概要 | 向く用途 | 試験での整理 |
|---|---|---|---|
| Chatbot | プロンプト+モデル+(任意)ナレッジの対話アプリ | 社内FAQ、カスタマーサポートの第一線 | 単発〜複数ターンのチャット。ツール呼び出しは限定的 |
| Agent | LLMがツール(検索・API・MCP)を自律選択 | 調査・多段タスク・外部システム操作 | AIエージェントの実装例 |
| Workflow | ノードを配線した決定的/分岐フロー | 定型的なLLMパイプライン、承認付き処理 | 再現性重視。Human-in-the-loopと相性良い |
| Chatflow | チャットUI+Workflowのハイブリッド | 対話しながら複雑フローを進めるアプリ | UXと制御の中間 |
いずれもWebappとして公開するか、APIとして外部システムから呼び出せます(Starter以上でロゴ除去等)。SandboxでもWebapp公開は可能ですが、リソース上限が厳しめです。
RAG・MCP・Observability
n8nにRAGノードを足すのではなく、Difyはナレッジベースがプラットフォームの中核です。PDF・Web・Notion等を取り込み、チャンク分割・ベクトル化・検索をGUIで設定し、アプリに紐づけます(公式:Get Your Data LLM Ready with RAG)。
Knowledge Pipeline
ドキュメント取込・チャンク・インデックス。External Knowledge API、Hybrid Search(プラン依存)。
MCP Client / Server
Native MCP Integrationで外部ツール接続。Difyアプリ自体をUniversal MCP Serverとして公開も可能(公式)。
Observability
LangSmith・Langfuse・Arize Phoenix等と連携。アプリログ・ランタイム分析(Professional以上で高度化)。
Marketplace
モデル・ツールプラグインをコード変更なしで拡張。コミュニティ投稿も可能(公式Ecosystem)。
試験のRAGは「検索で根拠を足してから生成する」構成です。Difyではナレッジ品質(チャンク・更新頻度)と公開前の回答検証が利用者側の責任——TF-0409の「そのまま社外配布×」と直結します。
セルフホストとライセンス
Difyのセルフホストはlanggenius/difyリポジトリのdocker/からdocker compose up -dが公式導線です。最小要件はCPU 2コア・RAM 4GB(GitHub README)。Community Editionは無料ですが、ライセンスは改変Apache License 2.0であり、Apache純粋版と同一視しないでください。
| 条件(GitHub LICENSE) | 内容 | 試験・調達での意味 |
|---|---|---|
| 商用利用 | 原則可能(社内アプリ基盤として) | 「OSS=商用不可」とは限らない |
| マルチテナント禁止 | 書面許可なく複数Workspaceを外部提供するSaaS運用不可 | 自社1Workspaceなら通常OK |
| ロゴ・著作表示 | フロントエンド利用時はDify表示を削除・改変不可 | 白ラベル要件はPremium/EnterpriseまたはAPI-only利用を検討 |
| Premium / Enterprise | 同一イメージ+ライセンスで機能解放(公式Discussions) | SSO・複数Workspace等は有料セルフホスト |
データ主権が必要な場合、Ollamaを社内サーバーに置き、DifyセルフホストからOpenAI互換APIで接続——という構成で、プロンプト・ナレッジを社内に閉じやすくなります(モデル推論は自社GPU/CPU依存)。
できること(主な機能)
マルチモデル
OpenAI、Anthropic、Azure OpenAI、Llama、Hugging Face、Replicate、Ollama等(公式Pricing)。
Webapp / API公開
ブランドカスタム(Professional+)。埋め込み・APIキー管理。
Trigger Events
Workflowのスケジュール・Webhookトリガー。Sandbox 3,000/月〜(公式)。
Annotation
回答への人間フィードバック収集。改善ループに利用(Quotaはプラン依存)。
Interactive動画相当
CTA・分岐・クイズ(Creator Cloud / 上位プラン)。研修・Lead獲得に。
Enterprise
SOC 2 Type II、SAML/SSO、Dedicated CSM、Implementation services(公式)。
よくある誤解
「Dify=n8nの日本語版」は×です。n8nはSlack×Salesforce×HTTPの汎用ワークフロー、DifyはLLM推論・RAG・Agentが本体のプラットフォームです。連携は可能(Dify API+n8n HTTP node)ですが、役割は異なります。
「セルフホスト=完全無制限・白ラベル自由」も誤りです。Communityは無料でもフロントのDify表示削除不可、マルチテナントSaaS不可等の制約があります(LICENSE)。
「RAGを載せれば幻覚ゼロ」も×です。検索ミス・古いドキュメント・不適切なチャンク分割で誤回答は起きます。試験のTF-0255・TF-0409と同様、人の確認が必要です。
「Dify=Ollama」——Ollamaはモデル実行、Difyはアプリ構築。セットで使うのが一般的です。
料金プラン(2026年6月時点)
以下は公式Pricing(Cloud Service・月払い)です。年払いは17%割引。Self-hostedはCloud Marketplace経由の表記もあり、CommunityはGitHubから無料デプロイが基本です。
Sandbox
$0
200 message credits/月 · 5 Apps · 50 Knowledge Docs
Professional
$59/月
5,000 credits · 50 Apps · 5GB KB · ロゴ除去
Team
$159/月
10,000 credits · 200 Apps · 50メンバー · Trigger無制限
| 項目 | Sandbox | Professional | Team |
|---|---|---|---|
| message credits | 200/月 | 5,000/月 | 10,000/月 |
| メンバー | 1 | 3 | 50 |
| アプリ数 | 5 | 50 | 200 |
| ナレッジ | 50 docs / 50MB | 500 docs / 5GB | 1,000 docs / 20GB |
| Trigger Events | 3,000/月 | 20,000/月 | 無制限 |
| ログ保持 | 30日 | 無制限 | 無制限 |
| API Rate Limit | 5,000/月 | なし | なし |
message creditsはLLM推論・アプリ実行の共通プールです。接続先OpenAI等のAPI料金は別途(セルフホストではDify creditsなし・プロバイダ課金のみ)。学生・教育者向け無料プログラムも公式にあります。
はじめ方・基本的な使い方
- Cloud or セルフホストを選択 試すだけならSandbox登録。データ閉域ならDocker Compose。
- モデルプロバイダを設定 OpenAI APIキー、またはOllama/OpenAI互換エンドポイントをWorkspaceに登録。
- Knowledgeを作成(RAGする場合) PDF/Web等をアップロード。チャンク設定を確認。
- アプリタイプを選びビルド Chatbot / Agent / Workflow / Chatflow。テスト実行で回答品質を確認。
- WebappまたはAPIで公開 社内PoC→Annotationで改善→本番。Observabilityを接続。
最小PoCは「社内規程PDF 1本+Chatbot 1体」から始め、幻覚・権限漏れがないか検証してからAgentやWorkflowへ拡張する——という段階的導入が安全です。
ビジネスでの活用例
エンタープライズQA Bot
19,000+従業員・20+部門向け社内FAQ(公式事例)。RAG+権限設計が鍵。
カスタマーサポートAgent
ナレッジベース+ツール呼び出しで一次対応。Annotationで継続改善。
営業・マーケWorkflow
複数LLMステップ(要約→分類→メール草案)をGUI配線。n8nよりLLM特化。
ローカルLLM+Dify
Ollama/LM Studioをプロバイダ接続。機密文書を外に出さないPoC。
MCP連携
社内DB・GitHub・SlackをMCP経由でAgentに接続。2026年の拡張軸。
スタートアップMVP
Sandbox→Professionalでアイデア検証。API公開でプロダクト組込み。
メリット・デメリット
| メリット | デメリット |
|---|---|
| RAG・Agent・Workflowが1 Workspaceに統合 | 純粋なSaaS連携自動化にはn8n/Zapierの方が厚い |
| セルフホスト+Ollamaでデータ閉域しやすい | セルフホスト運用(DB・ベクトル・更新)の負荷 |
| Sandbox無料でPoC可能 | Cloudはmessage credits上限が厳しめ |
| MCP・Observabilityで本番志向 | 改変Apacheのマルチテナント・ロゴ制約 |
| 国内含めエンタープライズ事例が豊富 | RAG品質・権限設計は利用者側の責任 |
n8n・Ollama・Zapierとの比較
| 観点 | Dify | n8n | Ollama | Zapier |
|---|---|---|---|---|
| レイヤー | LLMアプリ基盤(LLMOps) | iPaaS(API自動化) | LLMランタイム | iPaaS(ノーコード連携) |
| RAG | 第一級機能 | ノード/外部連携 | なし(実行のみ) | 限定的(AI Actions) |
| Agent | GUIビルダー | LangChainノード等 | tool calling(モデル依存) | AI Agents(別枠課金) |
| セルフホスト | Docker(改変Apache) | Docker(Fair-code) | ローカルインストール | クラウドのみ |
| 課金目安 | Sandbox $0 / Pro $59/月 | CE無料 / Cloud €20/月〜 | ローカル無料 | Free〜 / Team $20/月〜 |
| 試験での整理 | LLMアプリ+RAG基盤 | Execution課金iPaaS | ローカルLLM実行 | 9,000+アプリ連携 |
一文で整理:モデルを動かす=Ollama、SaaSをつなぐ=n8n/Zapier、LLMアプリを作って公開=Dify——3層を分けて覚えると試験もPoC設計も迷いにくくなります。
こんな人におすすめ
- 社内FAQ・RAGチャットボットを短期間でPoCしたいチーム
- Agent+Workflowをコード少なめで本番公開したい開発者
- Ollama/LM Studioと組み合わせてデータを閉じたい情シス
- 試験でRAG・エージェント・iPaaSの違いを具体例で押さえたい受験生
あえて向いていないのは、9,000アプリ連携の定番自動化だけ(Zapier/n8n向け)、LLM実行環境そのものだけ欲しい(Ollama向け)、汎用Text-to-Video(Runway向け)です。
よくある質問
Difyとn8nの違いは?
n8nはSaaS/API連携をノードでつなぐiPaaS(ワークフロー自動化)が中心で、AIはノードの一つです。Difyは最初からLLMアプリ(RAG・Agent・チャットボット)の設計・公開・監視を一体化したLLMOps基盤です。Slack通知の自動化ならn8n、社内FAQボットやRAGエージェントのプロトタイプ〜本番ならDify——という棲み分けが試験・実務で有効です(2026年6月時点)。
Difyは無料で使えますか?
はい。CloudのSandboxプランは$0で200 message credits/月、5アプリ、50ナレッジドキュメントが使えます。セルフホストはGitHubからDocker ComposeでCommunity Editionを無料デプロイ可能です(CPU 2コア・RAM 4GB以上推奨)。本番向けはProfessional $59/ワークスペース/月から(2026年6月時点・公式Pricing)。
DifyとOllamaの関係は?
OllamaはローカルLLMランタイム、Difyはその上に載るアプリ構築プラットフォームです。DifyはOpenAI/Anthropicに加えOllamaやOpenAI互換APIをモデルプロバイダとして接続でき、RAGやAgentをGUIで組み立ててWeb/APIとして公開します。LLMを動かすのがOllama、LLMアプリを作るのがDify——と整理すると混乱しにくくなります。
message creditsとは?
Dify Cloudでは、LLM推論やアプリ実行にmessage creditsが消費されます。Sandboxは200 credits/月、Professionalは5,000 credits/月、Teamは10,000 credits/月(2026年6月時点・公式Pricing)。WorkflowのTrigger Events(Sandbox 3,000/月等)は別枠で管理されます。セルフホストCommunityはDify側のcredits制限なく、接続先LLMのAPI料金のみが発生します。
セルフホストのライセンスに注意点は?
Difyは改変Apache License 2.0です。商用利用は可能ですが、書面許可なくマルチテナント(複数Workspaceを外部に提供)運用は不可、フロントエンド利用時はDifyのロゴ・著作表示を削除・改変不可——という追加条件があります(GitHub LICENSE)。同一Dockerイメージにライセンスで機能差を付けるPremium/Enterpriseも公式に存在します(2026年6月時点)。