Microsoft 365 Copilot(エムスリーオフィス・コパイロット)は、Microsoftが提供する法人向けAIアシスタントです。2023年11月の一般提供以降、Word・Excel・PowerPoint・Outlook・Teamsなどすでに使っているアプリの中で、メール・ファイル・会議・チャットを踏まえた回答や下書きを生成します。本記事は機能一覧の暗記ではなく、Microsoft Copilot(無料チャット)・Copilot Pro(個人)・M365 Copilot(法人)の三層ライセンス、Work IQとMicrosoft Graphによる業務データ接地、2026年6月のM365パッケージ更新(Copilot Chat enhancements)に絞って書いています。料金・同梱範囲は2026年6月時点の公式情報に基づき、契約前に必ず再確認してください。
試験で問われる見方
生成AIパスポートでは、Microsoft製AIはTF-0143(主要生成AI支援)の文脈で登場します。試験で効くのは次の3点です。
- 名称の区別 — 「Microsoft Copilot」(無料Webチャット)と「Microsoft 365 Copilot」(法人アドオン)、さらに「GitHub Copilot」(コード補完)を混同しない
- 業務データの扱い — 個人の無料アカウントに社内資料を入れない。法人利用は組織契約とガバナンス下で行う(TF-0289・TF-0350)
- 接地の仕組み — M365 CopilotはMicrosoft Graph経由でメール・ファイル等を参照する「業務データ接地型AI」の代表例
このサイトの演習で確認する
生成AIパスポート:一問一答 TF-0143(Microsoftと生成AI)、TF-0289(マルチモーダルデータの個人情報リスク)、TF-0350(公開前の確認事項)
関連ツール比較:Microsoft Copilot · Notion AI · Microsoft Designer
Microsoft 365 Copilotとは
Microsoft 365 Copilotは、チャットボットを別タブで開くのではなく、Wordのリボン、Excelのセル横、Teamsの会議画面など、作業中のUIにCopilotアイコンとして埋め込まれたAIです。2023年11月にEnterprise向けGA、2024年以降Business向けも拡大。2026年時点ではWork IQという知能レイヤー、Copilot Search、Copilot Notebooks、Copilot Create、Copilot Studioによるエージェントなど、単なる「要約ボタン」を超えた機能群に発展しています(Microsoft公式)。
技術的には、ユーザーの質問に対しMicrosoft Graph上のメール・Teamsチャット・SharePoint/OneDriveファイル・カレンダー等を検索し、取得した文脈をLLM(2026年3月時点でGPT-5.4等が利用可能と発表)に渡して回答を生成するRAG(検索拡張生成)型のパイプラインです。重要なのは、ユーザーがもともと閲覧権限を持つデータだけが参照対象になる点——これが個人向けWeb Copilotとの決定的な差です。
三層ライセンスの整理
MicrosoftのCopilotブランドは名称が似ており、試験でも実務でも混乱しやすいです。本記事のオリジナリティは、この三層表にあります。
| 層 | 製品名 | 主な利用者 | 業務データ接地 | アプリ内Copilot |
|---|---|---|---|---|
| 第1層 | Copilot Chat(無料Web等) | 個人・一部M365ユーザー | 限定的(2026年6月以降M365にenhancements同梱) | ×(Webチャット中心) |
| 第2層 | Copilot Pro | 個人(約$20/月) | 個人Microsoft 365データ(条件付き) | Office Web版の一部(条件付き) |
| 第3層 | Microsoft 365 Copilot | 法人(Business/Enterprise) | Graphフル(テナント全体) | Word/Excel/Teams等フル |
「家で試した無料Copilot」と「会社のM365 Copilot」は参照できるデータ・管理者の制御・課金単位が異なります。業務判断ではIT部門の案内を優先し、Microsoft Copilot記事(第1〜2層)と本記事(第3層)を分けて読むと整理しやすいです。
Work IQとMicrosoft Graph
2026年時点のMicrosoft公式は、M365 Copilotの背後にWork IQという知能レイヤーがあると説明しています。Work IQは大きく3要素で構成されます。
Data(データ)
メール、ファイル、会議、チャット、業務トランザクション——組織内の「仕事の実態」をGraph上から取得。
Context(文脈)
ユーザーの文体・嗜好・習慣を記憶し、時間とともにパーソナライズ(Microsoft公式説明)。
Skills & tools
データと文脈を組み合わせ、特定タスク向けにCopilotとエージェントを最適化。
権限継承とデータプライバシー
Microsoft公式は次を明記しています(2026年6月時点)。
- プロンプト・入力・応答はモデル学習に使用しない
- CopilotはM365の権限・機密ラベル・保持ポリティを継承——見えないファイルは参照されない
- 管理者向けITツールでCopilotとエージェントをテナント単位で管理可能
試験では「AIだから全社データを見られる」という誤解を避けることが重要です。Graph接地は権限の範囲内での参照であり、情報セキュリティ設計とセットで理解します。
アプリ内でできること
M365 Copilotライセンスが必要な機能の代表例です(プラン・ロールアウト状況は変更あり)。
Word
既存文書や指定ファイルを踏まえた下書き・要約・トーン変更。Agent Modeで複数ステップ編集(2026年ロールアウト)。
Excel
自然言語での数式提案、データ分析、グラフ生成、Python in Excel連携(環境依存)。
PowerPoint
Word文書やプロンプトからスライド生成、デザイン調整、Speaker notes作成。
Outlook
メールスレッド要約、返信下書き、トーン調整。受信箱・カレンダー文脈を踏まえた提案。
Teams
会議要約、リアルタイム字幕、チャット要約、会議中の質問応答(Intelligent recap等)。
Copilot Search / Notebooks / Create
自然言語の社内検索、プロジェクト素材の統合分析、資料・動画・ポッドキャスト風要約の生成。
Copilot Studioとエージェント
M365 CopilotライセンスにはCopilot Studioへのアクセスが含まれ、低コードで業務エージェント(契約レビュー、CRM参照、オンボーディング等)を構築できます。Agent StoreからMicrosoft/partner製のReady-to-use agentsも利用可能です。エージェントはWork IQとGraphコネクタで外部データソースにも接続できますが、IT設定とメータリングが必要な場合があります。
2026年のパッケージ更新
2025年12月4日、MicrosoftはM365商用スイートの価格・パッケージ更新を発表しました(Microsoft Licensing Resources)。2026年6月以降、テナントごとに30日通知のうえ段階的にロールアウトされ、2026年8月1日までに完了予定です。
本記事で押さえるべきは、Copilot Chat enhancementsがコアM365スイート(E3/E5/Business等)に同梱される点です。enhancementsには受信箱・カレンダー認識とWord/Excel/PowerPointエージェントへのアクセスが含まれます(Microsoft公式注釈)。
ただしこれはフルM365 Copilotアドオンと同一ではありません。Teams会議インテリジェンスのフル機能、Copilot Search、Copilot Studio、管理ダッシュボード等は引き続きMicrosoft 365 Copilotライセンスが必要です。導入検討時は「スイート同梱分で足りるか」「アドオンが必要か」をITと切り分けて確認してください。
なお、Standalone Copilot SKU(M365 Copilotアドオン単体)は今回のリスト値上げ対象外と明記されています(2026年7月1日のM365本体値上げとは別枠)。
よくある誤解
「M365を契約していればCopilotが使える」——基本ライセンスだけではアプリ内Copilotは使えません。Copilot Chat enhancementsの同梱範囲とフルアドオンは別物です。
「Copilot=GitHub Copilot」——GitHub CopilotはIDE向けコード補完。名称は似ていますが製品・課金・用途が異なります。
「Graph接地ならSlackやGoogle Driveも見える」——標準はM365データです。Slack、Jira、Salesforce等はGraphコネクタの追加設定が必要で、未対応のオンプレ製品もあります。
「全員にライセンスを割り当てるべき」——$21〜$30/ユーザー/月にM365本体が上乗せされるため、全社一斉より高頻度利用者から段階展開が現実的です。Microsoftも利用分析ダッシュボードを提供しています。
料金・前提ライセンス
Microsoft 365 CopilotはM365基本ライセンスへの追加(アドオン)です。2025年12月1日、Business向けは$30から$21/ユーザー/月へ恒久値下げされました(Microsoft発表)。以下は2026年6月時点の目安です。日本円表示・地域差は公式ストアで確認してください。
Copilot Business
$21/月
年払い・最大300ユーザー
Copilot Enterprise
$30/月
年払い・E3/E5等が前提
前提:Business Standard
$12.50/月
合算目安 $33.50/ユーザー
前提:E3 + Copilot
$36 + $30
合算目安 $66/ユーザー
| 項目 | Copilot Chat(無料/同梱) | Microsoft 365 Copilot(アドオン) |
|---|---|---|
| Web AIチャット | ○ | ○(Work IQフル) |
| Word/Excel/PPT内Copilot | ×(enhancementsは段階同梱) | ○ |
| Teams会議インテリジェンス | × | ○ |
| Copilot Search(セマンティック) | 基本検索のみ | ○ |
| Copilot Studio | × | ○(含む) |
| 管理・採用分析 | 限定的 | ○フルダッシュボード |
レガシーOffice 365 E1/E3からの移行が必要なEnterprise環境では、Copilot追加料金以上にE3移行コストがかかる場合があります。契約前にMicrosoftパートナーまたはライセンス担当へ確認してください。
導入の流れ・使い方
法人利用は個人のWeb Copilot試用とは手順が異なります。
- 前提ライセンスの確認 Business Standard/Premium、E3/E5等、Copilot追加の資格を満たすか確認します。
- 管理者がCopilotライセンスを購入・割当 Microsoft 365管理センターからユーザーまたはグループにライセンスを割り当てます。
- データ境界・Graph設定の確認 機密ラベル、DLP、保持ポリシー、Copilotのデータ処理オプションをITがレビューします。
- アプリ内Copilotアイコンから利用 Word/Excel等でCopilotペインを開き、「/」コマンドや自然言語で依頼します。
- 出力は人が確認してから共有 数式・引用・法務文書はハルシネーションリスクがあるため、必ず人間が検証します(TF-0350)。
うまく使うためのコツ
- 参照ファイルを明示する — 「/」や@メンションで特定の社内文書を指定すると精度が上がりやすい
- Teams会議の議事録を起点にする — 会議要約→Word下書き→Outlook返信の流れがM365 Copilotの定番
- エージェントは小さく始める — Copilot Studioで1業務(例:FAQ応答)からPilot展開
- 採用分析を見る — 使われていないライセンスは他ユーザーへ再配分を検討
ビジネスでの活用例
営業・企画
- 顧客メールスレッド要約→提案書Word下書き
- SharePointの過去案件から類似構成を検索
- Teams商談のIntelligent recap共有
管理・バックオフィス
- Excel売上データの自然言語分析
- 社内規程PDFを踏まえたOutlook返信案
- Copilot Searchで規程・手順書を横断検索
プロジェクト管理
- Copilot Notebooksでチャット・議事録・資料を統合
- 週次報告PowerPointの自動生成
- Planner/Loop連携(環境依存)
IT・情シス
- Copilot Studioでヘルプデスクエージェント
- Graphコネクタで社内Wiki統合
- 採用レポートでROI測定
メリット・デメリット
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 既存Word/Excel/Teams UIのままAI利用 | M365本体+アドオンの二重課金 |
| Graph接地でメール・ファイル文脈を反映 | M365外(Slack/Google等)は標準非対応 |
| 権限・機密ラベルを継承する設計 | 全社展開コストが高い($21〜$30/人/月) |
| Copilot Studioで業務エージェント構築 | エージェント・コネクタはIT設定が必要 |
| プロンプトを学習に使わない(公式) | 出力の正確性は保証されず人間確認必須 |
Notion AI・Copilot・Workspace AIとの比較
| 比較項目 | Microsoft 365 Copilot | Notion AI | Microsoft Copilot | Google Workspace AI |
|---|---|---|---|---|
| 前提環境 | M365テナント | Notionワークスペース | Microsoftアカウント | Google Workspace |
| データ接地 | Microsoft Graph | Notion+連携アプリ | Web+限定的M365 | Google Drive/Gmail等 |
| UIの中心 | Office/Teamsアプリ内 | Notionページ内 | Webチャット | Gmail/Docs/Sheets内 |
| 料金の目安 | $21〜$30/人/月+M365 | Business $20/人/月〜 | 無料〜Copilot Pro約$20 | Workspace+Gemini add-on |
| 向く組織 | M365中心のEnterprise | Notion中心のチーム | 個人・試用 | Google中心の組織 |
組織の「基盤SaaS」がMicrosoftならM365 Copilot、NotionならNotion AI、GoogleならWorkspace AI——というプラットフォーム追随型の選び方が2026年6月時点では現実的です。個人学習はMicrosoft Copilot無料版から始め、業務本番は法人ライセンスへ移行する流れが多いです。
こんな人におすすめ
- すでにMicrosoft 365 E3/E5またはBusiness Standard以上を全社利用している組織
- Word/Excel/Teams上でメール・議事録・社内ファイルを横断したAI支援が欲しい情シス・業務部門
- Graphの権限モデルを活かし、セキュアに業務データ接地したいEnterprise
- 試験で「業務データ接地型AI」「Microsoft Graph」の具体例を押さえたい学習者
あえて向いていないのは、Slack+Google Docs+Notionが主戦場の組織(Graph外データが多い)、個人の無料Copilotで社内業務を代替したいケース(ガバナンス不足)、全員に一律ライセンスを付与する予算がない中小チームです。
よくある質問
Microsoft 365 Copilotと無料のCopilot Chatの違いは?
Copilot ChatはWebチャット中心で、2026年6月以降M365スイートにCopilot Chat enhancements(受信箱・カレンダー認識等)が段階的に同梱されます。Microsoft 365 CopilotはWord・Excel・Teams等アプリ内AIとMicrosoft Graphによる業務データ接地、Copilot Search、Copilot Studio等を含む有料アドオンです。
Microsoft 365 Copilotの料金はいくらですか?
2025年12月以降、Business向けは$21/ユーザー/月(年払い)、Enterprise向けは$30/ユーザー/月(年払い)が目安です。Microsoft 365 Business Standard/PremiumやE3/E5等の基本ライセンスが別途必要で、合算すると$33〜$87/ユーザー/月程度になります(2026年6月時点)。
Microsoft 365 CopilotとCopilot Proの違いは?
Copilot Proは個人向けの上位プラン(約$20/月)で、Office Web版の一部AI等が対象です。Microsoft 365 Copilotは法人向けアドオンで、テナント全体のGraph接地・権限継承・管理ポータル・Teams会議インテリジェンス等が含まれます。
Microsoft 365 Copilotは社内データを学習に使いますか?
Microsoft公式は、プロンプト・入力・応答をモデル学習に使用しないと明記しています。さらにCopilotはMicrosoft 365の権限・機密ラベル・保持ポリシーを継承するため、ユーザーが閲覧できないファイルは参照されません(2026年6月時点)。
Microsoft 365 CopilotとNotion AIの違いは?
Notion AIはNotionワークスペース内のページ・DB・連携アプリが中心です。Microsoft 365 CopilotはExchangeメール、SharePoint、Teamsチャット、Outlookカレンダー等Microsoft Graph上の業務データを前提に、Word/Excel/Teams等の既存アプリ内で動作します。組織の基盤がMicrosoftかNotionかで選び方が分かれます。